不妊診療科に足を運んだとき、驚いたのが、初診でお医者さんに聞かれた「葉酸は飲んでいますか?」でした。
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それまでサプリメントは美容や健康への意識が高い人が、プラスαの効果を求めて飲むものだと思っていたので、まさかお医者さんに聞かれるとは!とびっくりした次第です。「飲んでいません」と正直に答えると、まあまあきつめに「ぜったいに飲んでくださいね」と言われちゃいました。今回はそんな私のような認識の甘い女性のために「葉酸」をピックアップ。葉酸っていったいなんなのよ?ということをくわしく見ていきましょう。
いろいろな食品に含まれている葉酸
そもそも葉酸が何なのかというと、ビタミンB群の水溶性のビタミンのこと。植物性食品のなかでは、名前のとおりほうれん草や春菊、モロヘイヤといった葉物野菜のほか、ブロッコリーやアスパラガスに豊富に含まれています。また動物性食品では、うなぎやうに、牛肉や鶏肉にたくさん含まれており、そのほか大豆製品である納豆や海藻でも葉酸を摂取することができます。「なんだ、けっこう摂取しやすいじゃん」と思われた方、確かにそうなんです。国民健康・栄養調査の結果によると、日本人の平均した葉酸の摂取状況は十分な量であることから、通常の食生活では摂取不足による欠乏の心配はほとんどないと言われています。
先天性異常「神経管閉鎖障害」を予防
じゃあなぜ妊娠になるとこの葉酸の摂取が声高に叫ばれるかというと、妊娠中の女性となると必要量が2倍になるから!というのもこの葉酸、別名「血をつくるビタミン」と呼ばれるほど、体をつくるのに重要な栄養素。
お腹の中で一人の命を育むことを考えると、お母さんが2倍摂取しなくてはいけないのがよく分かります。しかも葉酸の働きはたんに「体をつくる」だけではありません。葉酸は、脳や脊椎を形成する神経管が妊娠前期に正常に形成されないことによっておこる先天異常のひとつ、「神経管閉鎖障害」を予防してくれます。これは「なんとなくいい」のではなく、海外で行われた疫学調査によって、葉酸摂取が神経管閉鎖障害の発症リスクを低減することが示されているのです。
「私はとってなかった」のアドバイスに要注意
そのため厚生労働省では、神経管閉鎖障害リスク低減のために、「妊娠を計画している女性は食品に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mg(400μg)の葉酸を摂取」するように呼びかけています。国からそんな呼びかけが!?と驚くなかれ。
日本でこうした動きが出たのは2000年に入ってからのことですが、なんとアメリカをはじめとする諸外国では1990年代から葉酸摂取に関する勧告が出されていたそうで、日本政府が葉酸摂取を推奨するよりも約10年早い段階での取り組みになります。しかも不妊診療科に行くと葉酸が処方されたり、葉酸サプリが保険適用で購入できる国もあるのだとか。つまり葉酸摂取に関して日本は後進国。そのため母親や、まわりの年上の方から「私は葉酸なんて飲まなくても元気な赤ちゃん産んだわよ」なんて言われちゃう女性も多いそう。しかしここは大切なあなたの体と赤ちゃんのため。「厚生労働省が勧めているので!」ときっぱり跳ね除けちゃいましょう。
赤ちゃんが欲しいと思ったら葉酸摂取のタイミング
葉酸が妊婦さんにとってどれだけ重要かは分かった。じゃあ妊娠が判明したら飲みます。と決めたそこのあなた。甘い!!!
赤ちゃんの精髄神経を収納する神経管は、妊娠6週頃(最終月経から6週間後)に完成します。つまり先天異常の多くは、妊娠直後から妊娠10週以前に発生するということ。これ、妊娠の兆候があって産婦人科を受診してから飲み始めても、はっきり言って遅いです。そのため「妊娠1ヵ月以上前から、3ヵ月までの間」の摂取が勧められていますが・・・実際にはいつ妊娠するかなんて分かりません。だからこそ“赤ちゃんが欲しいと思ったら”がキーワード。妊娠を計画したタイミングで、普段からバランスの良い食事を心がけるとともに、葉酸を積極的に摂取することが大切なんです。
葉酸の摂取にサプリメントは必要不可欠
よし分かった!これから野菜いっぱい食べるぞと意気込んでいるところでしょうが、ちょっとストップ。
ここでいまいちど厚生労働省の呼びかけを振り返ってみましょう。「妊娠を計画している女性は食品に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mg(400μg)の葉酸を摂取」。はい、分かりましたか。“栄養補助食品”という文言が含まれているんです。これはつまり国が、食品からの摂取だけでは不足してしまうから、サプリメントの活用を推奨しているということに他なりません。じつは食品に含まれる葉酸は熱に弱く、しかも水溶性のため調理の段階で50%近くが分解してしまいます。また生体内の吸収率も、サプリメント中の葉酸が85%であるのに対し、食品中の葉酸は50%程度と見積もられており、これらの理由から確実に葉酸を補給できるサプリメントが勧められているようです。
過剰摂取分は自然と排出される
葉酸の必要性は十分にご理解いただけたかと思いますが、ここで勘違いしがちなのが、「じゃあ、たくさん摂ると赤ちゃんが大きくなるのね!」というもの。それは違います。葉酸は赤ちゃんの正常な発育に必要な栄養素ではあるものの、たくさん摂ったからといって発育が良くなるわけではありませんのでご注意を。葉酸は水溶性ビタミンなので、たくさん飲んだところで自然と尿の中に排出されてしまいます。ですからよっぽどの大量でない限り、過剰摂取に敏感になる必要はなさそう。各サプリメントに書かれている1日の量をしっかり守って飲むことが大切なようです。
じつは不妊にも?葉酸のメリット
これまで赤ちゃんの発育と葉酸の関わりについて書いてきましたが、葉酸はDNAの合成に関与しているため、着床した受精卵が適切に細胞増殖するのをサポートしてくれるそうです。しかも葉酸は子宮内膜を強化する働きもあり、子宮環境を整えることで、受精卵を着床しやすくするとも言われています。葉酸を飲めば妊娠できるというわけではありませんが、不妊に悩む人にとって葉酸を飲み続けるモチベーションになりそうないいニュースです。
母乳に、体の回復に。出産後も葉酸は大活躍
では最後に葉酸を摂取する期間について。はじまりについては、“赤ちゃんが欲しいと思ったら”と説明しましたが、葉酸は出産してからも必要だということをご存知でしたか?冒頭にも言いましたが、葉酸は別名「血をつくるビタミン」。そしてこの血液こそ、母乳の原材料なわけです。つまり葉酸は、栄養たっぷりの良い母乳をつくるのに必要不可欠なんです。他にもさまざまな産後の不安定な状態を防ぐなど、葉酸は産後もとにかく大活躍。一区切りつけるとしたら「卒乳まで」がひとつの目安です。
長い付き合いになるからこそ納得のいくサプリを
葉酸について勉強してみて感じたこと。それは「長い付き合いになりそうだな」ということでした。だっていまから飲み始めて、うまくすぐに妊娠したとしても1年以上は飲み続けるというわけですから。しかも体内にいる間は直接、出てきてからは母乳を通して赤ちゃんの体をつくることを考えると、適当に選んで飲むわけにもいきません。「葉酸サプリ」で検索すると山ほど出てくるけれど、皆様にはそれぞれ、自分に合ったサプリを見つけて欲しいと思います。私はこれまでサプリメントを飲んでこなかった人間なので、やっぱり若干の抵抗は残っていたため、せめてもの思いで「天然」にこだわりました。あと葉酸は、ビタミンCとビタミンB12と相互作用で働くから一緒に摂るといいそうなのですが、あれこれ買うのは面倒なので一気に摂れることも重要視しました。人それぞれ外せないポイントがあるはずなので、これ!と納得のいくサプリメントを飲み続けるのが一番だと思います。
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